公募について
What Design Can Doはイケア財団とパートナーシップを締結し、2021 年1月、気候変動に関する3回目のアクションプログラム「ノー・ウェイスト・チャレンジ(No Waste Challenge)」をスタートします。このチャレンジは、廃棄物と消費主義の気候変動への影響をテーマとする、国際的なデザインコンペティションです。
現在、私たちが直面している危機は、気候変動に限ったことではありません。私たちの頭の中には、新型コロナウイルスの方がより大きな存在としてあるかもしれません。しかし、これらは無関係とはいえません。
人間の行動が引き起こす生態系の破壊や、生物多様性の喪失は、新型コロナウイルスのような病原菌の感染拡大につながる恐れがあります。現在の大量消費型のライフスタイルは、地球環境にさまざまな問題を引き起こし、ひいては私たちにも病いをもたらせるのです。
「ノー・ウェイスト・チャレンジ」では、世界中のデザイナーや社会起業家を対象に、廃棄物を削減し、現在の生産と消費のサイクル「TAKE – MAKE – WASTE(資源を採取する – 生産 – 廃棄)」を見直すための、革新的なアイディアを募集します。
私たちWhat Design Can Doと共に、世界が直面している気候変動の危機について一緒に考えませんか?
私たちの消費型経済が地球を壊している
私たちの地球はゴミに埋もれている
私たちは毎年、地球上で21.2億トンという膨大な量の廃棄物を生んでいます。また購入したものの99%を半年以内に捨てています。
現在の消費と生産のサイクルにおける不適切な廃棄物の管理によって地球の状態は極限にまで追い込まれています。あらゆる種類の廃棄物(プラスチック廃棄物、繊維廃棄物、食品廃棄物、電子廃棄物、建設廃棄物など)は、生態系のバランスを脅かしています。
The Global Footprint Network は、資源利用と廃棄物量の観点から、地球のキャパシティ(許容量)をどれだけ超えているかを示す指標を作成 しています。それによると、私たちは正常な地球の状態を維持するのに 必要な資源のうち、すでに75%以上を消費していることになります。本来、地球が備えている資源の蓄積量と、廃棄物に対する許容量を比較すると、地球の限界をはるかに超えているのです。
私たちが大きな変化を起こさない限り、世界の廃棄物は2050年までに、さらに70%増加すると予測されています。
システムの問題
現在の経済モデルは「TAKE-MAKE-WASTE」という、直線的な流れに基づいています。
このモデルは、地球温暖化の原因となる炭素、メタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスを大量に発生させます。また、水や土壌を汚染し、生物多様性を大きく損なうことにつながります。動植物の生息地の喪失は、今まさに私たちが直面するパンデミックのような、死をももたらす未知のウイルスの放出にも関係するのです。
気候変動と生物多様性は相互に関係しています。さまざまな生き物が存在することは気候変動を緩和させ、生息地の保全や復元は大気中の二酸化炭素の削減に寄与します。生物多様性が豊かな環境は、気候の変化にうまく適応できるのです。
資源の採取と処理は、生物多様性の喪失や水ストレス*を引き起こす90%以上の原因となっています。なかでも食品やプラスチックの生産は大きな要因です。
不適切な廃棄物の管理は、直接的・間接的に生物多様性を損なう可能性があります。
例)
・直接的:海洋生物がマイクロプラスチックを摂食し、その影響を被る
・間接的:埋立地や焼却などの処理は、世界の二酸化炭素排出量の約5%に該当
資源の採取と処理は、世界の温室効果ガス排出量の半分を占めています。廃棄物の中には再利用できない素材で作られているものもあり、効果的な処理方法は常に課題となります。資源を採取してから廃棄するまでの直線的な経済モデルは環境に悪影響を与えるのです。
私たちはこの経済モデルにおいて何に注目しなければならないでしょうか。日常生活におけるあらゆる消費や、製造プロセスを考え直し、さらには廃棄の前段階についても目を向ける必要があるでしょう。
*一人あたりの年間使用可能水量が1,700トンを下回り、日常生活に不便を感じる状態
「採取-生産-廃棄」モデル
「TAKE-MAKE-WASTE」
資源の採取や、ほんのわずかしか使用されないような製品の生産が、地球温暖化の要因のひとつとされています。
廃棄物や温室効果ガスを生成することは、水やエネルギーなどの資源の損失を意味します。さらには生物多様性の維持や、二酸化炭素を吸収するのに必要な土地を奪うことにもつながります。
東京チームから
上のチャートは「採取- 生産- 廃棄」モデルが、地球温暖化と生物多様性の喪失を引き起こしていることを表しています。
誰にとってもフェアな、循環型の経済に向かって
直線から曲線へ。直線型の経済モデルから、いわゆる循環型の経済に移行するためにはどうすれば良いのでしょうか?
私たちはすべての人にとってプラスになるような、循環型経済(サーキュラー・エコノミー)を目指さなければなりません。消費量を減らし、ゴミを出さないように設計すること。また自然のシステムを再生する素材・製品を作り、長く使い続けることも必要です。サステイナブルな暮らしとは、誰もが享受できるような、包括的で、多様性に富むものであるべきです。
埋立地の安定化(不適切な廃棄物を取り除き、温室効果ガスの放出を防ぐこと)と、すでに捨てられた素材を回収することは、理想的な長期戦略とは言えません。優先すべきは、廃棄物が埋立地に辿り着かないようにする努力です。リサイクルや堆肥化も有効ですが、資源の質や価値を低下させることがあります。したがって、まずは製品のリユースと廃棄物の削減に取り組むべきだと考えます。
もちろん廃棄物を出さないことが最終的な理想ですが、まずは柔軟に取り組んでいく必要があります。廃棄物の削減や製品の再利用によって瞬間的なインパクトは生まれますが、同時に、長期的なシステム全体の見直しや、リ・デザイン(Redesign)にも目を向けることが不可欠です。